血管肉腫は猫での発生は稀ですが、犬の場合は脾臓に発生することが多く、心臓や肝臓、皮膚などにもよくみられます。腫瘍が小さいうちは症状が現れにくいものの、腫瘍が破裂すると一気に重篤な状態に陥ってしまいます。そのため、一刻も早く病気に気づけるよう、今回は犬と猫の血管肉腫についてご紹介していきます。
■原因
血管肉腫の原因は、はっきりとは解明されていないものの、紫外線や放射線などの暴露、外傷や鬱血などが要因になっていると考えられています。
また、ジャーマン・シェパードやゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバーなどの大型犬に好発することから、遺伝が関係しているのではないかとも考えられています。
■症状
症状は腫瘍の発生部位によって異なります。
・脾臓や肝臓など、腹腔内の臓器に発生した場合
腫瘍の破裂により腹腔内出血を起こすと、突然ふらつきや立てなくなるなどの症状が現れ、命を落としてしまうこともあります。
・心臓に発生した場合
腫瘍の破裂により心臓の周りに血液が溜まり、心臓を圧迫します(心タンポナーデ)。軽度の場合は食欲不振や運動不耐などの症状がみられますが、重度の場合は呼吸困難や虚脱がみられ、亡くなってしまうこともあります。
・皮膚に発生した場合
皮膚に血液を含んだような紫のしこりがみられます。
■診断方法
レントゲン検査や超音波検査などの画像検査を行うことでしこりの場所や大きさを確認したり、転移の有無を確認したりします。
診断を確定させるためには生検が必要になりますが、血管肉腫は針生検の有用性が低いため、一般的には術後に病理検査が行われます。
■治療方法
治療の第一選択は手術です。ただし、虚脱(ショック状態のこと)がみられる場合はショックに対する治療を行ってから手術を行う必要があります。
また、この腫瘍は転移しやすいため、状況によっては術後に化学療法(抗がん剤治療)を併用します。
しかし、かなり大きな状態で見つかった血管肉腫は治療を行ったとしても残念ながら予後はあまり良くない場合も多い腫瘍であるため積極的な治療ではなく対症療法を選択する場合もあります。ただし本当に小さい状態で脾臓に見つかったものなどは切除により良好な状態を保てる事もありますので早期発見早期治療のため健診で腹部の超音波検査などを定期的に受けることをお勧めします。
■予防法
血管肉腫は予防が難しいため、いかに早く腫瘍の存在に気づけるかが大切です。発生年齢をみてみると8〜13歳頃が多いため、高齢期にさしかかったら定期健診を受けるようにしましょう。
■まとめ
血管肉腫は影を潜めながら大きくなるため、突然重い症状が現れ、そのまま亡くなってしまうこともあります。しかし、残念ながら予防をする術がないため、いち早く病気に気付くことができるように毎年忘れずに健康診断を受けるようにしましょう。
当院における腫瘍の治療についてはこちらのページでも解説しています
<参考>
https://bvajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/vetr.585
https://www.mdpi.com/2306-7381/10/3/190
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