犬と猫の悪性黒色腫(メラノーマ)について

悪性黒色腫(メラノーマ)は名前の通り黒っぽい色をした悪性腫瘍で、猫では稀ですが犬では多く発生します。口の中や皮膚、爪の付け根(爪床)などにみられ、このうち、口の中や爪床にできるメラノーマは悪性度が高く、肺やリンパ節に転移しやすいことから早期発見・早期治療がカギとなります。今回は、犬や猫の悪性黒色腫について解説していきます。

■原因

悪性黒色腫は「メラノサイト」というメラニンを作る細胞に由来する腫瘍ですが、その発生の原因はまだ明らかになっていません

■症状

主に以下のような症状がみられます。

・黒っぽい色のしこりがみられる
・しこりが自壊して出血している
・食べづらそうに食事をする、口臭やよだれが増加する、口から出血する(口腔内悪性黒色腫)
・爪のあたりが赤く腫れる、爪が折れる・変形する(爪床悪性黒色腫)

また、口腔内悪性黒色腫や爪床悪性黒色腫は悪性度が高く、リンパ節や肺などによく転移します。リンパ節に転移するとリンパ節の腫れがみられ、肺に転移すると咳や呼吸困難などの症状がみられるようになります。

■診断方法

悪性黒色腫の診断には、注射針をしこりに刺して細胞を採取して顕微鏡で観察する「針生検」が有用です。悪性黒色腫の手術は取り残しのないように大きく切除を行わなければいけないため、針生検で診断がつかない場合には、術前に組織生検をして手術計画を立てる必要があります。

また、転移の有無や全身状態を確認するために、血液検査やレントゲン検査、超音波検査なども行います。口腔内の悪性黒色腫は広範囲に及んでいると手術ができない場合もあるため、大きくなっている場合はCTが必要になることもあります。

■治療方法

治療の第一選択は手術による腫瘍の切除です。悪性黒色腫は浸潤性が高いため、腫瘍の周りの組織を含めて大きめに切除します。

また、場合によっては抗がん剤治療や放射線療法を行うこともあります。

ただし、すでに病気が進行している場合など根治が難しい場合には、飼い主様とご相談の上、痛みを和らげてQOLを上げる「緩和治療」を行うこともあります。緩和治療は犬や猫の状態に合わせ、痛み止めや鎮静剤の投与、レーザー療法、温熱療法などを行います。

■予防法や気をつけるべき点

悪性黒色腫は予防が難しく転移をするケースも多いため、できるだけ早く病気に気がつき、治療を行うことが大切です。そのため、ご自宅でもスキンシップの一貫として、足先まで全身をしっかりさわって、しこりがないかを確認したり、歯磨きを行う際には口の中にしこりがないかどうかを確認したりする習慣をつけるようにしましょう。さらに定期的に健康診断を受けて、念には念を入れるようにしておくとさらに良いでしょう

■まとめ

悪性黒色腫は犬に多くみられますが、悪性度が高く、病気に気がついた頃にはすでにリンパ節や肺へ転移しているケースも少なくありません。そのため、ご自宅での健康チェックや病院での定期的な健康診断などを行い、早期発見・早期治療を心がけることが大切です。また、万が一ご自宅の愛犬・愛猫に黒っぽいしこりがみられた場合は、様子を見ずにすぐに動物病院を受診するようにしましょう。

当院では、その子の全身状態に合わせて、飼い主様と相談したうえで治療方法を選択しています。ご不安な気持ちを抱えた飼い主様をサポートできるよう努めてまいりますので、悪性黒色腫などの腫瘍についてお悩みの方は、当院にご相談ください。

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