乳腺腫瘍はメスの犬や猫に非常に多くみられる腫瘍です。女性ホルモンが原因で発生するため、なるべく早く避妊手術を行うことで発生率を大幅に下げることができます。今回はそんな犬や猫の乳腺腫瘍について、詳しくご紹介します。
■原因
女性ホルモンの影響で乳腺の組織が腫瘍化するため、避妊手術をしていない高齢の犬や猫に多くみられます。避妊手術を早期に行うほど発生率は低くなり、特に初回発情までに避妊をすると、その発症率は犬では0.5%、猫では9%まで下げることができます。
■症状
乳腺腫瘍の症状は、腫瘍の悪性度や進行度合いによっても異なりますが、初期には乳腺に小さいしこりができます。1カ所であることも多いですが、複数確認されることもあります。
さらに症状が進行すると、しこりは徐々に大きくなり自壊することがあります。そうなると出血や痛みを伴うため、元気や食欲がなくなるといった全身状態の変化が起こります。
また、乳腺腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍がありますが、犬の場合は50%が、猫の場合は約80%が悪性だといわれています。
悪性腫瘍の場合はリンパ節に転移することがあり、その後、肺に転移してしまうと数ヶ月で命を落としてしまうこともあります。
■診断方法
しこりに針を刺して採取した細胞を観察する「細胞診」を行うことで、他の体表腫瘍との鑑別を行います。ただし、細胞診だけでは診断ができず、良性か悪性かまでは判断がつかないため、最終的には病理組織検査を行うことで確定診断をします。
■治療方法
治療の第一選択は手術で、乳腺の切除を行います。しこりができている乳腺のみを切除することもありますが、腫瘍ができている場所や個数により切除する範囲が異なります。多数の腫瘍ができている場合などは片側全て、もしくは両側の全切除が望ましいとされています。
また、術後の病理検査で悪性とわかった場合には、切除しても転移する可能性があるため、状況により術後に抗がん剤治療をすることもあります。
■予防法やご家庭での注意点
犬で2歳半、猫で2歳になってから避妊をしても乳腺腫瘍の予防には効果がないといわれています。避妊手術は生後半年から実施可能なので、子犬・子猫の予防接種の際に早めに避妊手術のスケジュールを組んで、なるべく早めに避妊手術を行うようにしましょう。
また、腫瘍のサイズが3cmを超えると悪性度が高くなることがわかっています。そのため、コミュニケーションの一環としてお腹に触るクセをつけ、しこりのようなものに触れた場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
■まとめ
乳腺腫瘍は犬や猫で比較的よくみられる腫瘍です。悪性であるケースも少なくないため、見つけたらすぐに治療を行うことが大切です。そのため、愛犬・愛猫の乳頭付近にしこりがないか定期的にチェックを行い、さらに1年に1回健康診断を受けるようにして、早期発見に努めましょう。
当院における腫瘍の治療についてはこちらのページでも解説しています
<参考文献>
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9484584/
https://catribbon.jp/learning/
仙台市泉区南光台の動物病院
にきどうぶつ病院