胆嚢とは、肝臓で作られた胆汁を蓄える袋状の器官をいいます。胆汁は本来サラサラしていますが、その胆汁が粘液状になってしまう病気を「胆嚢粘液嚢腫」といいます。犬でみられることが多く、猫での発生は稀です。今回はそんな犬や猫の胆嚢粘液嚢腫について解説していきます。
■原因
胆嚢粘液嚢腫は、胆汁が粘液状になって胆嚢内に溜まり、胆嚢が硬くなってしまう病気です。はっきりとした原因は解明されていませんが、以下のような要因が関係していると考えられています。
・胆嚢の病気(胆泥や胆石など)
・加齢(中〜高齢犬発生が多い)
・体質(肥満や高脂血症)
・内分泌疾患(クッシング症候群、甲状腺機能低下症など)
また、ミニチュア・シュナウザーやシェットランド・シープドッグ、ミニチュア・ダックスフンド、チワワ、ポメラニアンなどの犬種で好発することがわかっています。
■症状
胆嚢粘液嚢腫はなかなか症状が現れず、長期間無症状の状態が続きます。ただし、胆汁がうまく排泄
できなくなると、嘔吐や下痢、食欲不振、腹痛、黄疸(皮膚や粘膜が黄色くなる症状のこと)などの症状がみられるようになります。また、ある日突然総胆管閉塞や胆嚢破裂を起こし、命にかかわるケースもあります。
■診断方法
血液検査やレントゲン検査、超音波検査を行うことで診断することができます。
胆嚢粘液嚢腫は血液検査で特異的な所見は見られないものの、ALPやGTP、コレステロール、血清総胆汁酸、ビリルビンなどの値の上昇が認められることがあります。また、超音波検査では「キウイフルーツ様」と呼ばれるような像がみられることが知られており、その他にも「放射型」「星形」「無構造型」などの様々なパターンが観察されることがあります。
■治療方法
胆嚢粘液嚢腫の治療では、多くの場合外科的治療(手術)が選択されます。
初期で症状がみられない場合や軽度の場合は、利胆剤や強肝剤などの投与や食事療法によって経過観察をすることもあります。
しかし、これらの治療に対する反応が悪い場合には、胆嚢を摘出する手術を行う必要があり、場合によっては緊急手術が必要になることがあります。
しかし、病気が進行している状態での手術はリスクを伴い、手術中や術後の死亡率は低くありません。そのため、飼い主様ともしっかり相談をしながら、手術のタイミングを見極めていく必要があります。
■予防法やご家庭での注意点
胆嚢粘液嚢腫のリスク要因の一つに肥満と高脂血症が挙げられるため、高脂肪・高カロリーの食事を避け、運動や食事などで体重管理を行うようにしましょう。
また、胆嚢粘液嚢腫は無症状である期間が長いことから、他の病気や健康診断で検査をした際に偶然発見されるケースも少なくありません。そのため、定期的に健康診断を受けるようにして、早期発見・早期治療を心がけるようにしましょう。
■まとめ
胆嚢粘液嚢腫はなかなか症状が現れないため、ある日突然重い症状が現れて緊急手術が必要になったり、最悪の場合命を落としてしまったりするケースもあります。そのため、初期の段階で発見できるよう、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
当院では、その子の全身状態に合わせて、飼い主様と相談したうえで治療方法を選択しています。ご不安な気持ちを抱えた飼い主様をサポートできるよう努めてまいりますので、胆嚢粘液嚢腫などの病気についてお悩みの方は、当院にご相談ください。
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